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岡山地方裁判所 昭和38年(わ)312号 判決 1964年7月31日

被告人 丸山敬 外一一名

主文

被告人丸山敬、同青野城也を各懲役七年に、

被告人常光寿保を判示第三、六の1別表(一)の1の罪につき罰金三、〇〇〇円に、同2ないし5の罪につき罰金一〇、〇〇〇円に、判示第一、四、第三、一および同六の2ないし6の罪につき懲役一年に、判示第二、一および第三、六の7の罪につき懲役五年に、

被告人木曽三郎を判示第三、七の1の罪につき罰金二、〇〇〇円に、判示第一、六、第二、一および第三、七の2、3の罪につき懲役三年に、

被告人原裕を判示第一、二、第三、一、二および第三、八の1、2の罪につき懲役一年に、判示第二、一、第三、八の3の罪につき懲役三年に、

被告人佐藤昭彦を懲役一年六月以上三年以下に、

被告人難波秀夫を懲役五年に、

被告人河原敬二を懲役三年に、

被告人小野一士を判示第三、一二の1ないし3の罪につき懲役一年に、判示第二、一、三、第三、一および第三、一二の4、5の罪につき懲役四年に、

被告人山崎信義を判示第一、一の罪につき懲役六月に、第二、三および第三、一三の罪につき懲役四年に、

被告人荒川繁孝を懲役三年以上五年以下に、

被告人横溝進を懲役一年六月以上四年以下に、

それぞれ処する。

未決勾留日数中被告人丸山敬に対して二七〇日を右刑に、被告人青野城也に対して三〇〇日を右刑に、被告人常光寿保に対して三〇〇日を判示第二、一および第三、六の7の罪の刑に、被告人木曽三郎に対して九〇日を右懲役刑に、被告人原裕に対して九〇日を判示第二、一および第三、八の3の罪の刑に、被告人佐藤昭彦に対して一七〇日を右刑に、被告人難波秀夫に対して九〇日を右刑に、被告人河原敬二に対して三〇〇日を右刑に、被告人小野一士に対して六〇日を判示第三、一二の1ないし3の罪の刑に、三〇〇日を判示第二、一、三、第三、一および第三、一二の4、5の罪の刑に、被告人山崎信義に対しては三〇〇日を判示第二、三、および第三、一三の罪の刑に、被告人荒川繁孝に対して三二〇日を右刑に、被告人横溝進に対して三二〇日を右刑に、それぞれ算入する。

被告人常光寿保、同木曽三郎においてその罰金を完納することが出来ないときは、金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

被告人丸山敬から、押収してあるダイナマイト三本(昭和三八年押第九八号の一)、牛乳びん入りダイナマイト一本(昭和三八年押九八号の四、同年押九九号の四)を、被告人荒川繁孝から、押収してある登山用ナイフ一本(昭和三八年押九九号の一)をそれぞれ没収する。

訴訟費用中証人北山力に支給した分は被告人丸山敬、同青野城也、同常光寿保、同木曽三郎、同原裕、同佐藤昭彦の、証人朴仙一、同三宅正敏、同松本鉄三、同佐々木千佐子に支給した分は被告人らの連帯負担とする。

被告人河原敬二に対する公訴事実中、昭和三八年一一月八日付起訴状第一の殺人未遂の事実については、同被告人は無罪。

理由

(本件犯行に至るまでの経過)

被告人らは、本件各犯行当時いずれも倉敷市内における暴力団体小野組に属し、被告人丸山は、若い者頭(いわゆる代貸)の地位にあつて、組長に次いで組の運営および組員を統括差配していた者であり、被告人青野、同常光、同難波、同河原、同小野は、それぞれ組の幹部ないし準幹部格として組内では重きをなし、被告人木曽、同原、同佐藤、同山崎、同荒川、同横溝は、平組員ないしそれに準ずる地位にあつた。小野組は、昭和三五年中に組長小野清により結成され倉敷市内における暴力団体としては顕著なる存在であつたが同組結成前から既に同市内で有力な不良グループを結成していた北山之が、昭和三七年末に刑務所より出所してからは、同人が再び不良グループを結成して同組に対抗して来るのではないかと極力警戒していたところ、昭和三八年の四、五月頃、かつて小野組々員であつて今後北山之とは交際しないという約束で同組を脱退した原博志が、同市内を北山之と連れ立つて通行しているのを、被告人青野、同難波、同河原らが認めてそれを咎めたことから、小野組と北山らとの対立が表面化し、さらに同年五月末頃になつて北山之らが小野清を殺害して小野組を壊滅してやると高言し、拳銃の借り集めに奔走しているという情報が小野組に伝つたため、小野組々員らは大いに憤慨し北山らをつけ狙うようになつたのであるが、同年六月初頃かつて北山之と親交のあつた小野組々員高見雅彦が北山のために指をつめて詫を入れ、かつ北山においても今後堅気になると小野清に約束したので、ともかく一応両者間に和解が出来た。しかるに、小野組はその頃から愈々自派の勢力の拡張を図つて、同市内で遊んでいる不良青少年、特に北山之の実弟北山力の輩下で下良グループを結成している佐川健治らに小野組への加入を勧誘し、同人らがそれを拒めば暴行を加えるなどして圧迫していた(判示第一の一、二、四)。そして、同年七月中旬には小野組々長小野清が本多会系山中組々長山中武夫の舎弟となり、小野組は本多会系の傘下に入つて勢力の確立を目指すに至つた。他方、北山之は依然として不良行為を続けていたばかりか、池元保人や谷本定信を通じて自派の北山力、原博志、佐川健治ら約一〇名と岡山市内の暴力団体である山口組池道組系の吉岡組(組長吉岡忠行)に加入して勢力の増強をはかり、小野組に対抗しようと企てたところ、同年七月末頃その情報が小野組にも伝つて、両派の関係がまた俄かに険悪となり、再び小野組々員らは北山之らの行方を追うことになつたが(判示第一の五の暴行は右に関連しておこつた)、同月三一日に被告人青野、同木曽、同佐藤らが倉敷駅前路上において北山力と遭遇した際同人が被告人木曽らに暴行されたことから(判示第一の六)、即日北山派の佐川健治ら数名が、その報復として小野組の自動車の窓ガラスを打ち壊すという挙に出たので、両派の反目抗争は急激に再び悪化するに至つた。そこで、北山派においては、倉敷市内を離れて西大寺市、総社市等に身をひそめるとともに、抗争に備えて拳銃等の兇器の調達に奔走し、小野組においても、拳銃、猟銃、ダイナマイト等の兇器を調達(判示第三の三、同五の3、同七の2)して抗争に備えるとともに倉敷市美和町一、一二二の八番地所在の同組事務所では北山派ないしは吉岡組員の奇襲に備えて猟銃拳銃等を準備した上、組員交代で厳戒態勢をとるようになつた(判示第三の五の3、同一〇の3、一一の2の各拳銃所持は右に関する)ところ、同年八月五日には前記北山一派の者が全員正式に右吉岡組々長吉岡忠行より盃を受け、ここに暴力団体である吉岡組と、小野組は深刻なる対立抗争の間柄となり、右の情況下において、同月六日午前一〇時頃前記小野組事務所に北山之らがバー「レインボー」附近にいる旨の連絡があり、被告人ら(同山崎を除く)は他の小野組々員とともに兇器を所携の上自家用車およびタクシーに分乗してそれぞれ現場に向い、その後判示第二の各所為に発展したものである。

(罪となるべき事実)

第一

一  被告人山崎は、昭和三八年六月上旬頃の午後一一時過ぎ頃倉敷市浜田町六一六番地附近路上において、北山力らの不良グループに属する佐川健治(当時一六年)、渡瀬泰蔵(当時一五年)、野上昌樹(当時一八年)らが通行しているのを見つけ、小野組々員高見雅彦と共謀して、右佐川らに因縁をつけたうえ、高見において、佐川の顔面を手拳で数回殴打したうえ腹部を数回足蹴りし、被告人山崎と高見の両名において渡瀬、野上両名の顔面をそれぞれ手拳で一回ないし数回殴打した後、更に右佐川ら三名を同市内酒津遊園地附近に連行し、同所で、高見において、佐川の顔面を手拳で殴打し、同人が転倒するやその腹部を足蹴り又は踏みつけ、高見において渡瀬の顔面を手拳で数回殴打したり、その身体を足蹴りし、被告人山崎において右渡瀬の睾丸を足蹴りし、その首筋をつかんで転倒させた上その身体を雪駄履きのまま数回足蹴りし、被告人山崎において、野上の顔面を手拳で数回殴打し、その首筋をつかんでその額を桜の立木に数回激突せしめた後転倒させ、その頭部背中等を雪駄履きのまま数回足蹴り又は踏みつけるなどし、もつて、佐川に対しては暴行を加え、渡瀬、野上に対しては数人共同して暴行を加え、

二  被告人原は、同年六月中旬頃同市栄町グランドパチンコ店附近路上において、予てから小野組へ加入するよう勧誘を受けながら断り続けていた安田盛治(当時一六年)がいるのを見つけ、因縁をつけたうえ同人の睾丸を雪駄履きのまま一回足蹴りして暴行を加え、

三  被告人佐藤、同荒川は共謀の上、同年七月一〇日頃の午後八時頃同市国鉄倉敷駅前附近路上において、北山力ら不良グループの一員であつてかつては被告人両名とも親交のあつた花沢敏夫(当時一七年)に対し、些細なことから、被告人佐藤において右花沢の腹部を足蹴りしその上半身を布バンドで数回殴打し、被告人荒川において花沢の顔面を平手打し、もつて、数人共同して右花沢に暴行を加え、

四  被告人常光、同佐藤、同荒川は、小野組々員朴仙一、同玉本健二と共謀の上、同年七月二二日頃同市美和町一、一二二の八番地小野組事務所において、前記佐川健治、野上昌樹に対して、しつように小野組に加入するよう勧誘し、同人らがこれを拒絶するや、玉本において「おどりや喧嘩道具を持つておろうが出せ」と申し向け、もしこれに応じなければ右佐川らの生命身体に如何なる危害を加えるかもわからないような態度を示して脅迫し、よつて畏怖した同人らを同市白楽町五二〇番地大島章恵方に連行し、同所において右佐川らからあいくち一丁(昭和三八年押九八号の八、同押九九号の六)、くり小刀一丁(昭和三八年押九八号の九、同押九九号の八)を交付させてこれを喝取し、

五  被告人佐藤、同荒川は、同年七月三〇日の午後九時頃北山力と顔見知りの大森数枝(当時一四年)が前記小野組事務所に立寄つた際、小野組々員玉本健二、朴仙一らとともに右大森に対して北山力、佐川健治らの所在をしつように詰問し、同女があくまで「知らない」と答えていたところ、右被告人両名において、右事務所附近路地に連行したうえ、同女の顔面をそれぞれ一回ないし数回平手打ちし、もつて、数人共同して暴行を加え、

六  被告人木曽、同佐藤は、青野城也とともに北山之およびその輩下の者らを探していたところ、同年七月三一日頃の午後九時頃同市国鉄倉敷駅前路上において、北山力が友森順二らと連れ立つて通行しているのを見つけたので、右北山に対して小野組事務所まで同行するように申し向けたところ、同人が右友森の操縦する自転車の荷台に飛び乗つて同所から逃走しようとしたため、被告人両名は共謀の上、被告人木曽において右自転車のハンドルを押えて右北山を突き飛ばし、更に、雪駄履きのまま数回足蹴りし、あるいは雪駄で同人の顔面等を数回殴打し、被告人佐藤において右北山の顔面を手拳で一回殴打しあるいは雪駄履きのまま足蹴りするなどし、もつて数人共同して暴行を加え、

第二

一 被告人丸山、同青野、同常光、同木曽、同原、同佐藤、同難波、同河原、同小野、同荒川および同横溝らは、かねて反目抗争を続けていた北山之ら吉岡組々員との喧嘩斗争を予想し、同組員と紛争が生じた場合には、小野組員中原昭義外四、五名と共同して右吉岡組員の生命身体に害を加える目的をもつて、同年八月六日午前一〇時過ぎ頃から同一一時過ぎ頃までの間同市平和町五四六の二バー「レインボー」こと池元保人方、同市白楽町六三七谷本定信方附近に、被告人青野、同小野において猟銃一丁および実包数発の、被告人常光において拳銃一丁(昭和三八年押九八号の七、同押九九号の二)および実包数発の、被告人佐藤において刃体の長さ一三センチメートル余のくり小刀一丁(昭和三八年押九八号の九、同押九九号の八)の、被告人荒川において刃体の長さ一二センチメートル余のくり小刀一丁(昭和三八年押九八号の一〇、同押九九号の七)の、被告人横溝においてあいくち一丁(昭和三八年押九八号の八、同九九号の六)の各兇器を所携して準備し、かつ被告人各自においてたがいに右兇器を準備していることを知りながら集合した。その際、右バー「レインボー」附近に吉岡組々員北山之および原博志がタクシーで到着したので、被告人常光は、小野組々員数名とともに右タクシーにつめ寄つたところ、北山らは所携の拳銃を擬しつつ車外に降り立ち、右拳銃を被告人常光の脇腹につきつけるようにしながらレインボー東側路地を南下しはじめたので、被告人青野においても、被告人常光およびその周囲に結集中の小野組々員の身に危険が迫つていることを察知し、同人らを支援するため前記猟銃を携えて急行しようとしたところ、北山らはいきなり小野組々員に向け拳銃を発射しはじめたので、被告人青野、同常光は、意思を相通じて共謀の上、右北山らを殺害しようと決意し、被告人青野は右猟銃を、被告人常光は前記拳銃を、それぞれ右北山らに向け発射しようとして引金を引いたが、いずれも不発であつたためその目的を遂げず、

二  被告人丸山、同荒川、同横溝は、前判示の集合に際して、小野組々員朴仙一が右北山らに狙撃されて負傷したことに憤激しその報復をするには同人らの背後にある吉岡組々員谷本定信を殺害するにしかずと決意し、共謀の上、同日正午頃被告人荒川、同横溝において前判示記載の谷本定信方に赴き、同所で右荒川が所携の拳銃(昭和三八年押九九号の二)を右谷本に向けて発射しようとして引金を引いたが、不発であつたためその目的を遂げず、

三 被告人丸山、同難波、同小野、同山崎および同荒川は、前判示記載の如く小野組々員朴仙一が北山之らに拳銃で狙撃された上、谷本定信方では拳銃不発に終りかえつて同人から猟銃を発射されて逃走するなどの不手際が続き、同組の面目が丸潰れになつたので、これを回復するため吉岡組事務所に拳銃を射ち込んで同組々長吉岡忠行およびその身内、組員らを脅迫しようと決意し、山中組々員今城光雄と共謀の上、被告人小野、同山崎において同月七日午後四時頃吉岡組事務所である岡山市上石井四〇一番地吉岡忠行方附近に赴き、右山崎は吉岡方前路上から幡司田鶴子外二・三名のいる右吉岡組家屋内に向い、所携の拳銃で数発射ち込み、もつて、右吉岡らの生命身体に害を加うべきをもつて脅迫し、

第三

一  被告人丸山、同青野、同常光、同原、難波、同河原および同小野は共謀のうえ、同年七月二〇日頃の午後九時頃倉敷市羽島五三一番地所在旅館「小町温泉」こと磯田政夫方において、暴力団体岡組水島支部員金金太郎、能登原新、小畑洋一および曹圭昌に対して、被告人丸山において満水の二升入りやかんでそれぞれの頭部を数回ずつ殴打し、被告人常光においてそれぞれの顔面を膝頭で蹴りあげ、被告人河原において皮バンドでそれぞれの頭部、肩、背中等を数回ずつ殴打し、もつて数人共同して暴行を加え、

二  被告人青野、同原は共謀の上、同月一九日頃の夜前記小野組事務所において、荒川茂一に対しその顔面、頭部等を、被告人青野において頭突きおよび衣紋掛で数回殴打し被告人原において平手で殴打し、もつて数人共同して暴行を加え、

三  被告人青野、同佐藤は共謀の上、人の身体、財産を害せんとするの目的をもつて、同年八月三日頃前記小野組事務所において爆発物である導火線・雷管付ダイナマイト一本(日本油脂製榎二号、牛乳空びんにつめ爆弾一箇に製造されたもの。昭和三八年押九八号の四)を所持し、

四  被告人丸山は

1 小野四郎と共謀の上、法定の除外事由がないのに、同年三月上旬より同年七月中旬頃までの間別紙犯罪一覧表(一)記載の通り前後五回に亘り、前記小野事務所外二ヶ所において水川肇外一名に対し同表譲渡品欄記載の覚せい剤をそれぞれ譲り渡し、

2 人の身体、財産を害せんとする目的をもつて、同年七月初旬から八月六日頃までの間、同市南町六五七番地の自宅および前記小野組事務所において爆発物である導火線・雷管付ダイナマイト五本(日本油脂製榎二号、内二本は同年八月三日頃それぞれ牛乳空びんと缶詰空缶に詰められ爆弾二箇に製造された。昭和三八年押九八号の一、四)を所持し、

3 法定の除外事由がないのに、同年八月六日午後二時頃同市八王寺二七一番地荒川繁孝方附近において、米国製アイバージヨンソン回転式五連発拳銃一丁(昭和三八年押九八号の七)および実包四発(右拳銃内に装填されているもの)を所持し、

五  被告人青野は、法定の除外事由がないのに

1 小野四郎、岡俊信と共謀の上、昭和三七年一一月中旬頃同市栄町グランドパチンコ店東側路上において、西郷正和に対し覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩粉末約〇・二二五グラムを譲り渡し、

2 同年一二月一二日頃前同市水島栄町所在公衆便所内において覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩粉末約〇・〇七五グラムを所持し、

3 昭和三八年八月四日頃前記小野事務所において、米国製アイバージヨンソン回転式五連発拳銃一丁(昭和三八年押九八号の七)および実包数発(右拳銃内に装填されているもの)を所持し、

4 同月六日頃前判示第二の一の犯行に際して、前記レインボー附近路上においてブローニング様四連発猟銃一丁および実包数発(右銃弾倉内に装填されているもの)を所持し、

六  被告人常光は

1 小野四郎と共謀の上、法定の除外事由がないのに別紙一覧表(二)記載の通り昭和三七年一〇月中旬頃より同年一二月中旬頃までの間前後五回に亘り前記小野組事務所において林孟志に対し同表譲渡品欄記載の覚せい剤をそれぞれ譲り渡し、

2 昭和三八年五月頃から反覆継続して自動車を運転し、前記小野組において氷配達等の業務に従事していたものであるところ、同年七月二四日午後一一時四五分頃、普通乗用自動車(ジープ型、岡三す五六五号)を運転し時速約四〇キロメートルで、同市川西町九五番地先の巾員五・三メートルの道路左側を北進行中、約一三メートル前方から道路左側を対向してくる自転車三台を認めたので、ハンドルを右にきつてこれと擦れ違おうとしたが、およそ運転者は運転中絶えず進路前方左右を注視警戒するはもちろん、同所は狭い道路であるから適宜減速して進行し、もつて危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、同一速度で前記自転車に気を奪われながら、右側に寄つたままで慢然と進行したため、自動車に乗つて道路右側を対向してくる森延泰三郎(当三一年)に約四メートルに接近して初めて気付き、急制動を施したが及ばず、自車右前部を右自転車に衝突させ、よつて同人に全治約一二週間を要する脳震盪、顔面手指擦過創、右下腿打撲、骨折の傷害を与え、

3 前記交通事故を発生させたのに、直ちに負傷者の救護等の措置を講ぜず、かつ右事故発生の日時、場所等法令に定める事項を直ちにもよりの警察署の警察官に報告せず、

4 公安委員会の運転免許を受けないで

(一) 前同日同所附近道路において前記普通乗用自動車を運転し、

(二) 同年六月二九日午後二時三〇分、頃同市栄町六〇〇番地附近道路において前記普通乗用自動車を運転し、

(三) 同年七月二三日午前九時五〇分頃、同市旭町七五四番地附近道路において前記普通乗用自動車を運転し、

5 同月一九日頃、前記小野組事務所において水川マリ子に対し、些細なことに因縁をつけ、平手で同女の顔面を一回殴打して暴行を加え、

6 法定の除外事由がないのに同月二〇日午後一〇時頃、同市川入地内から同市水島千鳥町地内に至る間の自動車内において日本刀、仕込刀各一振を所持し、

7 法定の除外事由がないのに、同年八月六日前判示第二の一の犯行に際して、前記レインボー附近道路上において、米国製アイバージヨンソン回転式五連発拳銃一丁(昭和三八年押九八号の七)および、実包数発(右拳銃弾倉内に装填されているもの)を所持し、

七  被告人木曽は

1 法定の除外事由がないのに、昭和三七年一二月一二日頃、同市水島栄町公衆便所内において、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩約〇・〇四五瓦を自己の身体に注射して使用し、

2 人の身体財産を害せんとするの目的をもつて、昭和三八年八月三日頃、前記小野組事務所において爆発物である導火線・雷管付のダイナマイト一本(日本油脂製榎二号、缶詰空缶につめ爆弾一個に製造されたもの)を所持し、

3 法定の除外事由がないのに、同月七日頃、岡山市石田組事務所前において、ドイツ製レギユラー回転式六連発拳銃一丁および実包数発(右拳銃弾倉内に装填されているもの)を所持し、

八  被告人原は

1 法令の除外事由がないのに、同年四月上旬頃、前記小野組事務所において、麻薬である燐酸コデイン〇・一〇八グラム位を所持し、

2 同年六月六日頃同市栄町山中賢治方前附近路上において右山中賢治に対し、自動車運転のことで立腹し、「ぶち殺してやるぞ」などと申し向け、もつて同人の生命身体に害を加うべきことをもつて脅迫し、

3 法定の除外事由がないのに、青野城也、小野一士と共謀の上、同年八月六日同市日之出町三二一大島荘アパート平松八郎方附近において、ブローニング様四連発猟銃一丁および、実包二〇数発ならびに、人の身体、財産を害せんとするの目的をもつて、爆発物である導火線、雷管付のダイナマイト一本(日本油脂製榎二号、昭和三八年押九八号の四、牛乳びんにつめ爆弾一個に製造されたもの)を所持し、

九  被告人佐藤は

1 法定の除外事由がないのに、同日前記判示第二の一の犯行に際して、前記レインボー附近道路上において刃体の長さが一二センチメートル余のくり小刀一丁(昭和三八年押九八号の九)を所持し、

2 昭和三九年五月一一日同市栄町五八七番地先路上において通行中の荒木守(当一六才)に些細なことから因縁をつけ、手拳で同人の顔面を殴打するの暴行を加え、よつて同人に対し全治約三日間を要する顔面右側頸部打撲傷を与え、

一〇  被告人難波は、法定の除外事由がないのに

1 小野一士より依頼をうけ、藤村豊と共謀の上、昭和三七年七月二〇日頃、大阪市浪速区難波球場附近の南海ホテルにおいて、坂田清正こと鄭今烈より、覚せい剤である塩酸フエニルメチルアミノプロパン粉末約九グラムを受け取り、これを同日、倉敷市住吉町二三一番地小野一士方において同人に交付し、もつて同人の判示第三の一二1別表(三)1記載の覚せい剤譲り受け行為を容易にさせてこれを幇助し、

2 小野四郎と共謀の上、昭和三八年七月頃、前記小野組事務所において、安田広己に対し、覚せい剤フエニルメチールアミノプロパン塩酸塩粉末約〇・〇七五グラムを譲り渡し、

3 同年八月五日頃、前記小野組事務所において、米国製アイバージヨンソン回転式五連発拳銃一丁(昭和三八年押九九号の五)および、実包数発(右銃弾倉内に装填されたもの)を所持し、

4 同月六日頃の夜岡山市内の石田組事務所附近において、ドイツ製レギユラー回転式六連発拳銃一丁(昭和三八年押九九号の二)および実包数発(右銃の弾倉内に装填されていたもの)を所持し、

5 原裕、松本鉄三と共謀の上、同月七日頃倉敷市日之出町三二一前記大島荘アパート平松八郎方附近において、ブローニング様四連発猟銃一丁および実包二〇数発を所持し、

一一  被告人河原は、法定の除外事由がないのに

1 小野四郎と共謀の上、同年六月末頃前記小野組事務所において、北山定に対し、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩粉末約〇・〇一五グラムを譲り渡し、

2 同年八月五日頃、前記小野組事務所において、米国製アイバージヨンソン回転式五連発拳銃一丁(昭和三八年押九九号の五)および、実包数発(右銃の弾倉内に装填されたもの)を所持し、

一二  被告人小野は

1 法定の除外事由がないのに、別紙一覧表(三)(小野一士譲受表)記載のとおり、昭和三七年七月二〇日頃より同年一二月一二日頃までに至る間、前後八回に亘り、倉敷市住吉町二三一番地同被告人方外三ヶ所において、坂田清正こと鄭今烈外一名より、覚せい剤である塩酸フエニルメチルアミノプロパン粉末合計約三二・〇五グラムを有償または無償でそれぞれ譲り受け、

2 法定の除外事由がないのに、別紙一覧表(四)(小野一士譲渡表)記載のとおり、同年九月九日頃より同年一二月一三日頃までに至る間、前後一三回に亘り山口県岩国市大字中津五橋アパート内八木澄子方居室外二ヶ所において、右八木澄子外一名に対し覚せい剤である塩酸フエニルメチルプロパン粉末合計約二・七六八グラムを有償または無償でそれぞれ譲り渡し、

3 法定の除外事由がないのに、同年一二月一三日頃岩国市大字車六三番地島田静子方八木孝生の居室において、同人に依頼して覚せい剤である塩酸フエニルアミノプロパン粉末約〇・〇八グラムを保管させてこれを所持し、

4 法定の除外事由がないのに、昭和三八年八月六日判示第二の一の犯行に際して、前記レインボー附近道路上において、ブローニング様四連発猟銃一丁および実包数発(右銃の弾倉内に装填されたもの)を所持し、

5 原裕、青野城也と共謀の上、同日前記大島荘アパート平松八郎方附近において人の身体、財産を害する目的で爆発物である導火線・雷管付のダイナマイト一本(日本油脂製榎二号、牛乳びん空びんにつめ爆弾一箇に製造されたもの。昭和三八年押九九号の四)を所持し、

一三  被告人山崎は、法定の除外事由がないのに同月七日頃、岡山市上石井四〇一番地吉岡忠行方附近道路上において、ドイツ製レギユラー回転式六連発拳銃一丁(昭和三八年押九九号の二)および実包六発(右銃の弾倉内に装填されていたもの)を所持し、

一四  被告人荒川は

1 朴仙一と共謀の上、同年六月五日午後九時頃倉敷市日吉町伯備線日吉踏切附近道路上において、通行中の林靖夫に対し、朴において手拳、および革スリツパで右林の顔面を数回殴打し、被告人荒川において、手拳で林の顔面を数回殴打し、あるいはその腹部を下駄履のまま足蹴りするなどの暴行を加え、よつて林に全治五日間を要する前額部挫傷を負わせ、

2 法定の除外事由がないのに、同月六日午前一時頃同市栄町五八七番地先道路上において、刃体の長さ約一三センチメートルの登山用ナイフ一丁(昭和三八年押九九号の一)を所持し、

3 法定の除外事由がないのに同年八月六日判示第二の一の犯行に際して前記レインボー附近道路上において、刃体の長さ一二センチメートル余のくり小刀一丁(昭和三八年押九九号の八)を所持し、

一五  被告人横溝は、法定の除外事由がないのに同日判示第二の一の犯行に際して、前記レインボー附近道路上において、あいくち一丁(昭和三八年押九九号の六)を所持し

たものである。

(証拠の標目)(略)

(判示第二、三の事実につき主たる訴因を認めなかつた理由)

検察官は、主たる訴因として、被告人山崎、同丸山、同難波、同小野、同荒川の判示第二、三の所為は殺人未遂であると主張する。しかし、被告人山崎が判示第二、三の所為を実行するに際し、吉岡忠行方居宅内に人のいることを覚知したうえで、その身体(ないしその至近箇所)を狙撃したと認めるに足りる証拠はなく、また現に同被告人が狙撃した箇所である右居宅玄関等は通例、人が密集継続して現在するところということも出来ないのであるから、人の現在家屋内に向つて拳銃を発射した所為をもつて当然に殺人の未必の犯意があるものと断ずるわけにはいかないので、結局同被告人に殺人未遂の所為があつたとすることは出来ない。よつて、被告人丸山、同難波、同小野、同荒川についても、その余の判断をするまでもなく殺人未遂に擬することは出来ない。そこで、さらに予備的訴因について審理を遂げ、判示のように認定する次第である。

(累犯となる前科および確定裁判)

被告人丸山は、(一)昭和三四年六月五日岡山地方裁判所で恐喝罪によつて懲役五月に処せられ、同三六年八月二五日右刑の執行を受け終り、(二)同三八年九月二七日倉敷簡易裁判所で暴行罪によつて罰金四、〇〇〇円の言渡を受け、該裁判は同年一〇月一七日確定したものであり、

被告人青野は、(一)昭和三四年四月一三日岡山地方裁判所倉敷支部で暴力行為等処罰に関する法律違反、脅迫、賍物収受罪によつて懲役三月、三年間保護観察付執行猶予(昭和三五年三月四日執行猶予取消)に、(二)同三五年二月三日同裁判所で傷害、恐喝罪によつて懲役八月に、(三)同三六年四月三日同裁判所で殺人予備、銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪によつて懲役八月に各処せられ、(一)の刑は同年五月三一日、(二)の刑は同三五年一〇月二日、(三)の刑は同三七年一月三一日それぞれその執行を受け終つたものであり、

被告人常光は、(一)昭和三七年九月二七日倉敷簡易裁判所で銃砲刀剣類等所持取締法違反によつて罰金七、〇〇〇円の、(二)同三八年四月二七日同裁判所で傷害罪によつて罰金二万円の、(三)同年七月九日同裁判所で道路交通法違反によつて罰金五、〇〇〇円の各言渡を受け、(一)の裁判は同三七年一〇月一八日、(二)の裁判は同三八年五月一八日、(三)の裁判は同年八月一日それぞれ確定したものであり

被告人木曽は、(一)昭和三四年一二月二八日岡山地方裁判所倉敷支部で窃盗、恐喝、傷害罪によつて懲役一〇月、三年間保護観察付執行猶予(昭和三五年四月二七日執行猶予取消)に、(二)同三五年四月四日同裁判所で恐喝罪によつて懲役八月に各処せられ、(一)の刑は同三六年一〇月二四日、(二)の刑は同三五年一二月二四日それぞれその執行を受け終り、(三)同三八年七月六日倉敷簡易裁判所で傷害、暴行罪によつて罰金一万円の言渡を受け、該裁判は同月二一日確定したものであり、

被告人原は、昭和三八年七月九日倉敷簡易裁判所で道路交通法違反によつて罰金三、〇〇〇円の言渡を受け、該裁判は同年八月一日確定したものであり被告人難波は、昭和三八年九月三日倉敷簡易裁判所で罰金三、〇〇〇円の言渡を受け、該裁判は同月一八日確定したものであり

被告人河原は、(一)昭和三四年七月三一日岡山地方裁判所倉敷支部で恐喝罪によつて懲役六月、同四月に、(二)同三六年九月五日倉敷簡易裁判所で賍物故買、同牙保罪によつて懲役一年六月および罰金六、〇〇〇円に各処せられ、(一)の刑は同三五年六月一二日、(二)の刑は同三七年一一月四日それぞれその執行を受け終つたものであり

被告人小野は、(一)昭和三四年五月八日倉敷簡易裁判所で窃盗、同教唆によつて懲役一〇月、三年間執行猶予(同年八月一七日執行猶予取消)に、(二)同年七月二七日岡山地方裁判所倉敷支部で恐喝罪によつて懲役六月、三年間執行猶予(同三五年四月一五日執行猶予取消)、窃盗幇助罪によつて懲役四月に、(三)同三六年四月三日同裁判所で傷害、銃砲刀剣類等所持取締法違反、殺人予備罪によつに懲役一〇月に各処せられ、(一)の刑は同三五年八月二七日、(二)の刑は同三六年五月一八日と同三四年一〇月二七日、(三)の刑は同三七年三月一八日それぞれその執行を受け終り、(四)同三八年三月八日岩国簡易裁判所でたばこ専売法違反によつて罰金一、〇〇〇円の言渡を受け、該裁判は同年四月二〇日確定したものであり

被告人山崎は、(一)昭和三一年四月一〇日岡山地方裁判所で強盗致傷罪によつて懲役五年以上七年以下に処せられ、同三八年一月四日右刑の執行を受け終り、(二)同年六月二五日倉敷簡易裁判所で道路交通法違反によつて罰金三、〇〇〇円の、(三)同年九月一二日岡山簡易裁判所で同罪によつて罰金七、〇〇〇円の各言渡を受け、(二)の裁判は同年七月一六日、(三)の裁判は同年九月二九日それぞれ確定したものである。

以上の各事実は、当該被告人らの当公判廷における各供述ならびに各前科調書によつて認められるところである。

(法令の適用)

被告人丸山の判示所為中、第二、一は刑法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、同二は刑法六〇条、二〇三条、一九九条に、同三は同法六〇条、二二二条一項、罰金等臨時措置法三条に、第三、一は暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、同四の1は覚せい剤取締法一七条三項、四一条一項四号に、同2は爆発物取締罰則三条に、同3のうち拳銃所持の点は銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に、実包所持の点は火薬類取締法二一条、五九条二号にそれぞれ該当するところ、被告人には前示(二)の確定裁判を経た罪があり、以上はこれと刑法四五条後段の併合罪の関係にあつて未だ裁判を経ないものであるから、同法五〇条によつて更に処断すべく、第三、四の3の罪は一個の行為で数個の罪名にあたる場合であるから、同法五四条一項前段、一〇条によつて重い銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑に従い、第二、二については所定刑中有期懲役刑を、その余の罪については所定刑中各懲役刑を選択し、前示(一)の前科があるので同法五六条一項、五七条によつて各再犯の加重(第二、二については同法一四条の制限内で)をし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条によつてもつとも重い判示第二、二の殺人未遂の刑に同法一四条の制限に従つて法定の加重をした刑期範囲内で、同被告人を懲役七年に処し、

被告人青野の判示所為中、第二、一の凶器準備集合の点は刑法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、殺人未遂の点は刑法六〇条、二〇三条、一九九条に、第三、一、二はいずれも暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条(第三、一についてはさらに刑法六〇条)に、第三、三は刑法六〇条、爆発物取締罰則三条に、第三、五の1は刑法六〇条、覚せい剤取締法一七条三項、四一条一項四号に、同2は同法一四条一項、四一条一項二号に、同3、4の拳銃または猟銃所持の点は各銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に、実包所持の点は各火薬類取締法二一条、五九条二号にそれぞれ該当するところ、第二、一の兇器準備集合と殺人未遂の所為とは手段と結果の関係にあり、第三、五の3、4はいずれも一個の行為で数個の罪名にあたる場合であるから、刑法五四条一項前段、後段、一〇条によつて、第二、一については重い殺人未遂の刑に、第三、五の3、4についてはいずれも重い銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑に従い、第二、一については所定刑中有期懲役刑を、その余の罪については所定刑中各懲役刑を選択し、被告人には前示前科があるから刑法五六条一項、五七条、五九条によつて各累犯の加重(第二、一については同法一四条の制限内で)をし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条によつてもつとも重い判示第二、一の殺人未遂の刑に同法一四条の制限に従つて法定の加重をした刑期範囲内で、同被告人を懲役七年に処し

被告人常光の判示所為中、第一、四は刑法六〇条、二四九条一項に、第二、一の兇器準備集合の点は同法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、殺人未遂の点は刑法六〇条、二〇三条、一九九条に、第三、一は暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、第三、六の1は刑法六〇条、覚せい剤取締法一七条三項、四一条一項四号に、同2は刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条に、同3は道路交通法七二条一項前段、後段、一一七条、一一九条一項一〇号に、同4は各同法六四条、一一八条一項一号に、同5は刑法二〇八条、罰金等臨時措置法三条に、同6および7のうち拳銃所持の点は各銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に、同7のうち実包所持の点は火薬類取締法二一条、五九条二号にそれぞれ該当するが、第二、一の兇器準備集合と殺人未遂の所為とは手段と結果の関係にあり、第三、六の7は一個の行為で数個の罪名にあたる場合であるから刑法五四条一項前段、後段、一〇条によつて第二、一については重い殺人未遂の刑に、第三、六の7については重い銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪に従うべきところ、被告人には前示(一)(二)(三)の確定裁判を経た各罪があり、判示第三、六の1別表1の罪は右(一)と、同2ないし5の各罪は同(二)と、第一、四第三、一および同六の2、3、4、5、6の各罪は同(三)といずれも同法四五条後段の併合罪の関係にあつて未だ裁判を経ないものであるから同法五〇条によつて更に処断することとし、第三、六の1については各所定刑中罰金刑を、第二、一については所定刑中有期懲役刑を第三、六の2については禁錮刑をその余の罪については所定刑中それぞれ懲役刑を各選択し、同被告人を判示第三、六の1別表1の罪につき所定金額範囲内で罰金三、〇〇〇円に、同2ないし5の各罪については同法四八条二項によつて各罪の金額の合算額の範囲内で罰金一万円に、第一、四および第三、一および同六の2、3、4、5、6は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条によつてもつとも重い判示第一、四の恐喝罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で懲役一年に、同第二、一および第三、六の7もまた同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条によつて重い第二、一の殺人未遂の刑に同法四七条但書の制限内で法定の加重をした刑期範囲内で懲役五年に処し、同被告人が前記罰金を完納することができないときは同法一八条によつて五〇〇円を一日に換算した期間労役場に留置するものとし、

被告人木曽の判示所為中、第一、六は暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、第二、一は刑法二〇八条ノ二、一項、罰金等臨時措置法三条に、第三、七の1は覚せい剤取締法一九条、四一条一項五号に、同2は爆発物取締罰則三条に、同3の拳銃所持の点は銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に実包所持の点は火薬類取締法二一条、五九条二号にそれぞれ該当するが、同被告人には前示(三)の確定裁判を経た罪があつて、第三、七の1の罪はこれと刑法四五条後段の併合罪の関係にあつて未だ裁判を経ないものであるから、同法五〇条によつて更に処断することとし、所定刑中罰金刑を選択してその金額範囲内で同被告人を罰金二、〇〇〇円に処し、またその余は同法四五条前段の併合罪であつて、第三、七の3は一個の行為で数個の罪名にあたる場合であるから、同法五四条一項前段、一〇条によつて重い銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑に従うこととし、以上いずれも所定刑中懲役刑を選択し、同法四七条本文、一〇条によつてもつとも重い判示第三、七の2の爆発物取締罰則違反の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、同被告人を懲役三年に処し、前記罰金を完納することができないときは同法一八条によつて五〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置するものとし

被告人原の判示所為中、第一、二は刑法二〇八条、罰金等臨時措置法三条に、第二、一は刑法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、第三、一、二はいずれも暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、第三、八の1は麻薬取締法二八条一項、六六条一項に、同2は刑法二二二条一項、罰金等臨時措置法三条に、同3のうち猟銃所持の点は刑法六〇条、銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に、実包所持の点は刑法六〇条、火薬類取締法二一条、五九条二号に、爆発物所持の点は刑法六〇条、爆発物取締罰則三条にそれぞれ該当するところ、右3は一個の行為で数個の罪名にあたる場合であるから刑法五四条一項前段、一〇条によつてもつとも重い爆発物所持の罪の刑に従うべく、被告人には前示確定裁判を経た罪があつて、右第一、二、第三、一、二、および第三、八の1、2の罪はこれと同法四五条後段の併合罪の関係にあつて未だ裁判を経ないものであるから同法五〇条によつて更に処断すべく、なお右各罪およびその余の前記各罪はそれぞれ同法四五条前段の併合罪であるから、いずれも所定刑中懲役刑を選択した上、同法四七条本文、一〇条によつて、確定裁判前のものについてはもつとも重い判示第三、八の1の麻薬取締法違反の罪の刑に、確定裁判後のものについては同八の3の爆発物等所持の罪の刑に同法四七条但書の制限内で、いずれも法定の加重をした刑期の範囲内において、同被告人を前者について懲役一年に、後者について懲役三年にそれぞれ処し

被告人佐藤の判示所為中、第一、三、五、六はいずれも暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、第一、四は刑法六〇条、三四九条一項に、第二、一は刑法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、第三、三は刑法六〇条、爆発物取締罰則三条に、第三、九の1は銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に、同2は刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条にそれぞれ該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、所定刑中いずれも懲役刑を選択(ただし第一、四を除く)した上、同法四七条本文、一〇条によつてもつとも重い判示第三、三の爆発物所持の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で処断すべきところ、犯情に照らし同法六六条、六八条三号によつて酌量減軽をし、なお少年であるから少年法五二条を適用し、同被告人を懲役一年六月以上三年以下に処し

被告人難波の判示所為中、第二、一は刑法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、第二、三は刑法六〇条、二二二条一項、罰金等臨時措置法三条に、第三、一は暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、第三、一〇の1、2はいずれも覚せい剤取締法一七条三項、四一条一項四号、刑法六〇条(1はなお刑法六二条)に、第三、一〇の3、4、5のうち拳銃または猟銃所持の点はいずれも銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に、実包所持の点はいずれも火薬類取締法二一条、五九条二号にそれぞれ該当するが、被告人には前示確定裁判を経た罪があり、以上は刑法四五条後段の併合罪の関係にあつて未だ裁判を経ないものであるから、同法五〇条によつて更に処断すべく、右第三、一〇の3、4、5はいずれも一個の行為で数個の罪名にあたる場合であるから、同法五四条一項前段、一〇条によつていずれも重い銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑に従い、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、第三、一〇の1は幇助であるから同法六三条、六八条三号によつて法律上の減軽した上、同法四七条本文、一〇条によつてもつとも重い判示第三、一〇の2の覚せい剤取締法違反の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、同被告人を懲役五年に処し

被告人河原の判示所為中、第二、一は刑法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、第三、一は暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、第三、一一の1は刑法六〇条、覚せい剤取締法一七条三項、四一条一項四号に、同2のうち拳銃所持の点は銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に、実包所持の点は火薬類取締法二一条、五九条二号にそれぞれ該当するが、右2の所為は一個の行為で数個の罪名にあたる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条によつて重い銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑に従い、以上所定刑中いずれも懲役刑を選択し、被告人には前示前科があるから同法五六条一項、五七条、五九条によつて各累犯の加重をし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条によつてもつとも重い判示第三、一一の1の覚せい剤取締法違反の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、同被告人を懲役三年に処し

被告人小野の判示所為中、第二、一は刑法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、第二、三は刑法六〇条、二二二条一項、罰金等臨時措置法三条に、第三、一は暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、第三、一二の1、2はいずれも覚せい剤取締法一七条三項、四一条一項四号に、同3は同法一四条一項、四一条一項二号に、第三、一二の4のうち猟銃所持の点は銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に、実包所持の点は火薬類取締法二一条、五九条二号に、同5は刑法六〇条、爆発物取締罰則三条にそれぞれ該当するが、被告人には前示(四)の確定裁判を経た罪があつて、第三、一二の1、2、3の各罪は、これと刑法四五条後段併合罪の関係にあつて未だ裁判を経ないものであるから、同法五〇条によつて更に処断すべく、以上所定刑中いずれも懲役刑を選択し、被告人には前示(一)(二)(三)の前科があるから同法五六条一項、五七条、五九条によつてそれぞれ累犯の加重をし、右は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条によつて犯情のもつとも重いと認める第三、一二の1別表の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役一年に処し、ついで判示第三、一二の4の所為は一個の行為で数個の罪名にあたる場合であるから同法五四条一項前段、一〇条によつて重い銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑に従うべく、以上判示第二、一、三、一および第三、一二の4、5、についていずれも所定刑中懲役刑を選択し、前示の前科があるから同法五六条一項、五七条、五九条によつて各累犯の加重をし、これらも同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条によつてもつと重い判示第三、一二の5の爆発物取締罰則違反の罪の刑に同法一四条の制限に従つて法定の加重をした刑期範囲内で、同被告人を懲役四年に処し

被告人山崎の判示所為中、第一、一の佐川に対する暴行の点は刑法六〇条、二〇八条、罰金等臨時措置法三条に、渡瀬、野上に対する暴行の点はいずれも暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、第二、三は刑法六〇条、二二二条一項、罰金等臨時措置法三条に、第三、一三のうち拳銃所持の点は銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に、実包所持の点は火薬類取締法二一条、五九条二号にそれぞれ該当するが、被告人には前示(二)(三)の確定裁判を経た罪があつて、第一、一の各罪は右(二)の罪と、その余は(三)の罪といずれも同法四五条後段の併合罪の関係にあつて未だ裁判を経ないものであるから、同法五〇条によつて更に処断すべく、第三、一三は一個の行為で数個の罪名にあたるから、同法五四条一項前段一〇条によつて重い銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑に従い、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、前示(一)の前科があるので同法五六条一項、五七条によつて各再犯の加重をし、第一、一の各罪およびその余の各罪は各同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により前者については重い暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の刑に、後者については重い判示第三、一三の銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑にそれぞれ法定の加重をした刑期範囲内で、同被告人を前者の各罪につき懲役六月に、後者の各罪につき懲役四年に処し

被告人荒川の判示所為中、第一、三、五はいずれも暴力行為等処罰に関する法律一条、罰金等臨時措置法三条に、第一、四は刑法六〇条、二四九条一項に、第二、一は刑法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、第二、二は刑法六〇条、二〇三条、一九九条に、第二、三は同法六〇条、二二二条一項、罰金等臨時措置法三条に、第三、一四の1は刑法六〇条、二〇四条、罰金等臨時措置法三条に、同2、3はいずれも銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に各該当するので、第二、二については所定刑中有期懲役刑を、その余の罪についてはいずれも所定刑中懲役刑を各選択し、(第一、四を除く)以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条によつてもつとも重い判示第二、二の殺人未遂の刑に同法一四条の制限に従つて法定の加重をした刑期範囲内で処断すべきところ、被告人は少年であるから少年法五二条を適用し、同被告人を懲役三年以上五年以下に処し

被告人横溝の判示所為中、第二、一は刑法二〇八条ノ二・一項、罰金等臨時措置法三条に、第二、二は刑法六〇条、二〇三条、一九九条に、第三、一五は銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条一号に各該当するので、第二、二については所定刑中有期懲役刑を、その余についてはいずれも所定刑中懲役刑を各選択し、第二、二は未遂であるから刑法四三条本文、六八条三号によつて法律上の減軽をし以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条によつてもつとも重い判示第二、二の殺人未遂の刑に法定の加重をした刑期範囲内で処断すべきところ、少年であるから少年法五二条を適用し、同被告人を懲役一年六月以上四年以下に処し

刑法二一条を適用して未決勾留日数中、被告人丸山については二七〇日を右刑に、被告人青野については三〇〇日を右刑に、被告人常光については三〇〇日を第二、一、第三、六の7の罪の刑に、被告人木曽に対しては九〇日を右懲役刑に、被告人原については九〇日を第二、一、第三、八の3の罪の刑に、被告人佐藤については一七〇日を右刑に、被告人難波に対しては九〇日を右刑に、被告人河原については三〇〇日を右刑に、被告人小野については三〇〇日を第二、一、三、第三、一および第三、一二の4、5の罪の刑に、六〇日を第三、一二の1ないし3の罪の刑に、被告人山崎については三〇〇日を第二、三、第三、一三の罪の刑に、被告人荒川については三二〇日を右の刑に、被告人横溝については三二〇日を右の刑にそれぞれ算入することとし、押収してあるダイナマイト三本(昭和三八年押九八号の一)、牛乳びん入りダイナマイト一本(同年押九八号の四、同年押九九号の四)は、被告人丸山の判示第三、四の(2)の犯罪行為を、登山用ナイフ一本(同年押九九号の一)は被告人荒川の判示第三、一四の(2)の犯罪行為をそれぞれ組成した物で犯人以外の者に属しないから同法一九条によりこれを没収する。

訴訟費用については、刑訴法一八一条本文、一八二条により証人北山力に支給した分は被告人丸山、同青野、同常光、同木曽、同原、同佐藤に、証人朴仙一、同三宅正敏、同松本鉄三、同佐々木千佐子に支給した分は、被告人らに連帯して負担させることとする。

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、判示第三、三および同四の2および同七の1の罪につき、爆発物取締罰則は、太政官布告によつて制定せられたもので、現行憲法に適合した法律とは認められない旨主張するが、同罰則が、現行日本国憲法の下においても、法律としてその効力を保有しているものであることは、昭和三四年七月三日最高裁判所第二小法廷判決(最高裁判所刑事裁判例集一三巻七号第一〇七五頁)において認めているところであり、当裁判所もまた右判決と同様に解するので弁護人の主張は採用し難い。

(被告人河原について殺人未遂を無罪と認めた理由)

昭和三八年一一月八日付起訴状第一の公訴事実の要旨は、

「被告人河原は、昭和三八年八月六日小野組々員朴仙一がかねて反目抗争を続けていた吉岡組々員北山之、原博志に拳銃で狙撃されて負傷した上、その報復措置として同日実行した吉岡組々員谷本定信殺害計画も拳銃不発のため失敗に終り、小野組の面目丸潰れとなつたので、吉岡組々員およびその身内の者を殺害してこれを挽回しようと決意し、被告人丸山敬、同難波秀夫、同小野一士、同山崎信義、同荒川繁孝、および山中組々員今城光男らと共謀のうえ、被告人小野一士、同山崎信義らを同月七日午後四時頃吉岡組事務所である岡山市上石井四〇一番地吉岡忠行方に赴かせ同人方前路上から幡司田鶴子外二、三名のいる同家屋内に向い所携の拳銃をもつて数発射ちこませたが、同人らに命中しなかつたためその目的を遂げなかつたものである。」

というのである。

よつて判断するに、第一〇回公判調書中被告人河原の供述部分および同被告人の昭和三八年一〇月七日付検察官に対する供述調書などによれば、被告人河原が、被告人丸山らにおいて吉岡忠行方居宅の狙撃を共謀した際、被告人河原も同室して右謀議の内容の一部を中途まで聴いていた事実は認められるけれども、同被告人が共同犯行者として右謀議に参与していたことを認めるに足りる証拠はなく、ひつきよう同被告人については犯罪の証明がないので、刑訴法三三六条により無罪の言渡をすべきものとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 竹島義郎 川崎貞夫 木原幹郎)

別紙一覧表 (一)~(四)略

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